獣医眼科専門医トラビス・ストロング氏(カナダ)によるシマリスの目の構造

カナダを拠点に世界を飛び回って野生動物の目・視覚を専門にしている獣医眼科専門医のトラビス・ストロング博士よりご連絡を頂き貴重なお話を伺うことが出来ました。

シマリスの目について話す素晴らしい機会を与えてくれた@bikke_the_chipさんに感謝します。
シマリスを愛する皆様が、楽しみながら勉強になることを願っています。

BikkeとTodの目が美しいのは皆さんご存知の通りです。

シマリスは昼間に活動するため、明るい環境に適した目を持っています。
動きの速い捕食者を避けるつつ、草木の間を素早く巧みに移動することからシマリスが非常に優れた視力を持っていることがわかります。

他の哺乳類と同様に、シマリスは色覚に優れています。
虹彩は濃い茶色で、小さくて丸い瞳孔があり網膜に届く光の量をコントロールしています。

目は頭に対し横向きについており、視野は広く捕食者を探すのに優れています。

シマリスの目の断面図

シマリスは昼間に活動するため、有害な紫外線に目がさらされています。

人間の目とは異なり、シマリスのレンズ(水晶体)は黄色をしています。これは紫外線をカットするための工夫です。

シマリスの黄色い水晶体

シマリスの目で最も興味深いのは、その網膜です。
シマリスは網膜にある2種類の錐体によって色を見ることができます。

一方、人間の網膜には3種類の錐体(青、緑、赤の光に対応)があり、一般的に錐体の数が多いほど色覚が優れていると言われています。

そのため、シマリスの色相識別能力は人間よりもやや劣ると考えられます。
(アカリスはリスでは珍しく3色であり、これは樹上生活するリスのため赤い実など餌にしていた為と考えられます。)

シマリスの目には、もうひとつ興味深い特徴があります。

視神経乳頭(ONH)は、すべての哺乳類において、網膜からの視覚情報を脳に伝える太い神経の末端に位置しています。

ONHは目の盲点でもあり、視覚をある程度制限しています。
ヒトをはじめとする多くの哺乳類では、ONHは丸く、中央に位置しています。

人のONH

普段は意識していませんが、私たち人間は、網膜の中央に小さな盲点を持っています。

このような中心部の盲点は、たとえ小さなものであっても、シマリスが高速で移動する捕食者から逃れることができるかどうかの分かれ目になるかもしれません。

その代わり、彼らのONHは丸いというよりも細くて直線的で、網膜のはるか上の方にひっそりとあります。

シマリスのONH

これはすぐ下の地面に盲点が向いている事を意味しています。
このようにONHがユニークな形をしていることで、死角による視覚への悪影響が軽減され、シマリスは地平線や空にいる捕食者をよりよく探し出すことができるのです。

シマリスの目のもう一つの驚くべき特徴は、冬眠中に網膜がどのように変化するかということです。

昼間の視覚や色覚を司る網膜の錐体は、冬眠中に部分的に退化し冬眠明けには速やかに再生します。
このような網膜の変性と再生は実に驚くべきことであり、人間の網膜変性を予防する方法のヒントになるかもしれません。

今回のお話がシマリスたちの視覚生活を少しでも理解する機会になれば嬉しいです。